「終活」という言葉をよく耳にするようになりました。
字面通りに受け取れば、終わりのための活動という意味ですね。
終わりのための活動とは、つまり自分の死について計画を立てたり、準備したりすることです。
お墓の購入やメモリアルローンといった葬儀に活用できるサービスについて調べること、そして自分のお葬式の計画を立てるといった、まさに死のための準備を想像する方が多いかもしれません。
しかし終活の意味はそれだけではありません。実は「終活」にはもっと深い意味があるのです。
終活とは何なのか。そして、どんなことをすればいいのか。
何となく意味は分かるけれど具体的にはちょっと……という人のために、すぐにできる終活についてお伝えします。
まず「終活」という言葉は、死の準備だけを指すのではありません。
確かに終活の中には遺言をしたためたり、自分のお墓の準備をしたりすることも含まれます。しかし終活にはもっと広く深い意味があります。それは、「自分の人生の整理整頓をすること」という意味です。
多くの人はこの言葉に首を傾げるかもしれません。整理整頓の意味がよく分かりませんね。
ですが、よく考えてみてください。誰かが生きるということは、お金がかかります。生活費に教育費、給与に税金とたくさんのお金の収支が積み重なるということです。
また、給与をやりくりして不動産を購入したり、資産運用をしたり、貯蓄をしたりしますね。
生きていくことは財産が貯まることであり、財産を使うことでもあります。物を購入し、所持するということでもあるはずです。
また、生きていくということは誰かの縁を結ぶことでもあります。親から子供が産まれ、子供は育って誰かと結婚します。友人もできれば、仕事仲間もできます。
皆さんは自分の交友関係や財産をしっかり把握していますか?
今考えていること、今後の希望をすらすらとすぐに言葉にできますか?
それはなかなか難しいことのはずです。なぜなら、人はそれぞれたくさんのものを抱えているから。
じっくり自分と向き合って始めて自分の持っているものを一つ一つ思い浮かべることがやっとではないでしょうか。自分の人生カウンセラーを自分で行います。
自分の人生の情報を整理し、自分の死について考えることはこの先の人生をよりよく生きるためにすることでもあります。
自分に関する情報を整理整頓し、今後のために役立てること。
これが終活です。
しかしこれだけでは具体性に欠けます。整理整頓とは、具体的にどんなことをすればいいのでしょうか。
終活では「絶対にこれをしなさい!」という決まりはありません。しかし、決まりがないと言われると困ってしまいますね。終活として他の人はどんなことをしているのでしょうか。実は、終活には一般的な方法があるのです。
終活の一般的方法の一つとして「エンディングノートの作成」があげられます。
エンディングノートとは、いわばここまでの人生を記録帳のようなものです。一冊のノートに自分の情報をまとめます。
エンディングノートは、本屋さんや雑貨屋さんで定型のものが販売されています。ですが、別にまっさらなノートに記載しても問題ありません。
インターネット上には契約書などの無料テンプレートを提供しているサイトもあり、終活の際に重宝するエンディングノートも無料で書式が提供されています。
特に決まりはありませんので、自分で「これだ!」と思えるものを使いましょう。
エンディングノートには決まった記載事項はありません。しかし、終活の一環です。終活とは情報を整理し、今後と今をより良く生きるための情報整理だと言いました。
今後をよりよく生きるためにも、また、自分や家族のためにも、役立てられる形でまとめておくことが望ましいといえます。
エンディングノートに記載しておくことはこんなことです。
自分の財産や大切しているものを一覧にして、現在の自分の情報を整理してみましょう。
また、それぞれの在処を記すことにより、今後こういった資産をどうしたいのか、そのまま処分するのか活用するのか改めて考え直すことができます。
一覧にした資産は死後にどうしたいのかという希望も併せて記しておきましょう。家族も遺産相続手続きに一覧を活用することができます。まさにデータベースです。
また、大切にしていたものや友人をリストアップし、自分の人生を振り返るのも良いでしょう。今後どうやってつき合っていこうか、自分が死んだら誰をお葬式に呼ぶかという希望を書いておくのもいいですね。
終活におけるエンディングノートというと、死後の財産目録や名簿といった意味合いだけと思われがちですが、そんなことはありません。
今までの情報を今後に生かすために一端整理することが重要であり、死の際に活用できるということはあくまで副次的なものです。
自分の所持品や交友録という人生で培ったものを自分で記録し向き合い死も含めて未来とお付き合いするためのデータベース。それこそがエンディングノートです。
記載のコツとしては、何かを記載したらその何かをどうしたいかを一緒に書き記すことです。不動産Aについて記載したら、Aをどうしたいかをワンセットとして書いてみましょう。
しかし、本人が記したこういった情報は、家族から見たら時に遺言のように思えるかもしれません。
財産の一覧や処分方法の希望などが記してあることが多いため、確かにエンディングノートは遺言に似ているところがあります。しかし、エンディングノートと遺言書は取り扱いが別です。
遺言では、法律に則った形式で遺言を記すと、法律上の遺産分割に優先することができます。遺言は財産の所持者であった本人の最後の意思ですから、財産の持ち主がそう望んでいるのだからと、法律による遺産分割に基本的に優先するのです。
エンディングノートに財産一覧や、誰に何をあげたいという内心を整理しておくと、それをそのまま遺言書として使えそうです。しかし、エンディングノートと遺言書はまったく違ったものです。
遺言書は法律で定められた用件に則っていなければ駄目という厳格なものです。エンディングノートに記載したからと言って遺言書の代わりには使えません。遺産処分としての遺言書と、情報整理としてのエンディングノートを使い分けることが重要です。
終活とは、何も墓やお寺の準備、葬式の計画立てという死についての準備だけを指すわけではありません。
自分の現時点の情報を整理し、今後より良く生きていつか死ぬための見つめ直しの活動でもあります。そんな終活の一環としては、エンディングノートの活用が挙げられます。
終活においてエンディングノートを活用することは大きなメリットがあります。
今の情報を整理して、自分を見つめ直すということ。
終活といっても、必ずしも死ぬための準備というわけではありません。情報を整理することによって今後の生活に生かすことができますから、よりよく生きることに役立てることができます。
また、家族は本人が亡くなった後に「本人の希望と情報が書き残されたデータベース」として活用することができます。
家族は友人の一覧や財産の一覧を確認して葬儀や相続手続きをスムーズに進めることができるため、終活としてエンディングノートをまとめておくということは家族にとっても大きなメリットがあることです。
特にコツをおさえた書き方をしていると、家族が「A不動産はこうやって処分して欲しいと本人は望んでいたのね」と察してくれるというメリットもあります。
エンディングノートには遺言書のような法的拘束力はありません。
あくまで本人の気持ちと情報が集約されたデータベース(記録帳)という取り扱いです。しかし、将来と今を想って記すエンディングノートは、家族が本人の気持ちを想う上で重要な情報になってくれるはずです。