数多く存在する「マナー」のうち、弔事のマナーについては難しいと認識されています。
経験する数が少ないため覚えられない、そもそも理屈が分からない、地域による慣習の違いが大きいなど、難しいと言われる理由はさまざまですが、弔事ゆえに声に出して教えづらい、教えてもらいづらいことが大きな要因ではないでしょうか。
ただ、それでも礼を欠くことはしたくありませんね。基本的な考え方を理解し、苦手意識を克服しましょう。
弔事のマナーについて、基本的な考え方は「あらかじめ準備しない」というものです。もちろん本当に準備しないわけではありません。
学生なら制服があるので良いのですが、社会人であれば喪服は持っているのが当然とされています。また宗教により事情は異なりますが、数珠や香典袋を備えてあるという方も多いはずです。
重要なのは、「準備していた感じを出さない」ということです。なぜなら、準備していた感じイコール死を待っていたとイメージするからです。
たとえば、香典に新札はタブーと言われていますが、なぜでしょうか。それは、新札とは金融機関にて「準備するもの」だからです。
しわのあるお札を香典として持っていくということは、訃報を聞いて財布にあったお金を取り急ぎ持って、駆けつけましたということなのです。
同じ理由から、最初に弔問する時は普段着でとされています。(当然、明るい色の服はNGですが。)重要なことなので繰り返しますが、死を待っていたことをイメージさせる「準備していた感じ」を出さないことがポイントです。
香典の相場とは
訃報を聞いてすぐに香典を包まなくてはと思っても、はたしてその相場はいくらなのか迷うところです。前述したように、弔事においては地域による慣習の違いが大きいのですが、それでも一般的に下記のような「相場」があります。
近隣の人とはいわゆる町内の人にあたり、昔は葬儀の手伝いという労力も提供し合うなど、お互いさまという意味合いがあるようです。
会社関係等一般の会葬者は、その人の年齢や立場、故人や遺族との関係によるところが大きいのですが、5,000円もしくは10,000円が相場と言われています。
家族で香典?と思われがちですが、喪主一家以外の家族を指します。香典のみ、供物や供花の負担のみ、両方の場合があります。いずれの場合も、祝儀不祝儀に関わらず以前に自分が頂いた金額を参考にしても良いでしょう。
また、香典袋の水引は「結び切り」とします。これには、二度と同じことが起きて欲しくないという意味があります。表書きは薄墨で書くのがマナーです。
通夜や葬儀に参列して最も困ることの一つが焼香ではないでしょうか。静かな会場で周囲の人にも聞きづらいですし、前の人の焼香を参考にしようと思っても、こちらに背中が向いているので手元が見えません。
香を額に戴いているのを、後ろから見ると口にしているように見え、自分の番になった時、食べる真似をしたという笑い話もあるくらいです。ここでは仏教の主な宗派の焼香の仕方を紹介します。
以上の宗派の中で浄土真宗は、香を額に戴くことはしません。
また、葬儀を執り行っている家の宗派に合わせるのか、会葬者自身の宗派に合わせるのかという問題においては特に決まりはありませんが、宗教の自由を損なわないことが大切ですので、充分な配慮が求められるところでしょう。
配慮という点では、会葬者が多数いる場合は、宗派に関わらず丁重に1回焼香するということあります。
参列する葬儀によっては、献花の場合もあります。
献花には特に決まりはありませんが、一般的には茎を先に、花が手前になるように献花台に置きます。献花には、用意されているものを使用しますが、各自お花を持ち寄る場合もあります。
神式といわれる神葬祭では、玉串拝礼を行います。玉串奉奠は下記のとおりです。
拝礼は、二礼二拍手一拝です。通常の拍手は音を立てますが、葬儀の時は「しのび手」と言い、音を立てない拍手をするため両手を打つ寸前で止めます。
ここまで、葬儀のマナーについて知っておいて頂きたいことを述べてきましたが、最後に意外なタブーをご紹介します。
あなたは誰かの訃報を知った時、最初にどのような行動を取りますか?
慌ててそのご家族に連絡したりしていませんか?実はこれこそが、してはならない行動です。遺族の心情に配慮するという面もあるのですが、実務的な理由もあるのです。
故人の自宅には家族や親戚が集まっています。また、これから連絡しなくてはならない親戚もいるでしょう。葬儀の日程等いろいろな事を短期間で決めなければならない遺族にとって電話でのやり取りは必要最小限に抑えたいものです。
遺族に直接連絡を取るのはしばらくの間控えるようにしましょう。どうしても確認したいことがあれば、会場となる葬儀社へ連絡するのが良いでしょう。
会葬者を受け入れる形式の葬儀であれば日時を教えてくれますし、家族葬等の場合はその旨を知ることができます。
急に耳にする訃報に慌ててしまいがちですが、あなたが一般の会葬者の立場なら、一分一秒を争う状況ではありません。落ち着いて行動することで失礼のないように注意を払い、心からのお悔やみの気持ちを伝えることができるでしょう。