家族が亡くなるのは大ごとですが、悲しむ暇も、心を静める間もなくすぐに葬儀の準備に取りかからなければいけません。しかも遺族は中心になって葬儀の準備を進めなければいけないことから、日本の遺族は非常に慌ただしい日々を過ごさなければならないと言えるでしょう。
葬儀から納骨まで終わり参列者にお礼を伝えたら、後は頭が真っ白になったという経験を持つ遺族は決して少なくないのです。しかし、日本は葬儀の後にまだまだ息つく暇なく「後かたづけ」をしなければいけません。そして「新たな準備」をしなければいけません。
葬儀後にしなければいけない諸手続にはどんなものがあるのでしょうか。慌ただしい日々を効率よく乗り越えるべく、葬儀後の手続きについて覚えておきましょう。
「葬儀後にしなければいけないことは何ですか?」
と問うと、多くの方は「四十九日の準備」「喪中はがきの準備」と答えるのではないでしょうか。
確かに葬儀が終わったら次にすることは初棚(初盆)や喪中はがきの準備、そして次の法要の準備です。地域によっては四十九日まで毎日のように地域特有の行事(お念仏など)があるため、葬儀後はすぐにそちらの準備に取りかからなければいけないというお宅もあります。
しかし、葬儀後にしなければいけないのは次の法要の準備や喪中はがきといった挨拶関係の手配だけではありません。他にもしなければいけないことがあります。
それは「相続の手続き」です。加えて自治体や加入している団体関係の手続きもこなさなければいけません。
家族が亡くなったのにすぐに「相続の手続きをしなさい」と言われると、お金の話をされているようで不快に感じる方もいることでしょう。しかし相続を含め諸手続には期限が定められているものもあるため、「葬儀が終わったら力が抜けて頭が真っ白」「他の手続きは後からでいいや」では済みません。てきぱきと片づけていかなければならないのです。
相続をはじめとした葬儀後に行わなければならない手続きは「本当の終わり」であり「葬儀後の後片づけ」でもあり「新たなはじまり」でもあります。
必要な手続きを終わらせて初めて、やっと個人の人生に本当の意味で幕を引くことができたと言えるのではないでしょうか。そして次に幕が上がる時は、気持ちにけじめをつけ、新しいスタートを切る時です。
新しい幕開けのためにも、葬儀後に必要な手続きは早めの終わらせておくようにしましょう。必要な手続きには、主に以下のようなものがあります。整理してみましょう。
葬儀後にすぐに行いたい手続きとしては、相続手続きがあります。
家族が亡くなったのにすぐにお金の話をするようで不謹慎と感じるかもしれませんが、相続手続きをすぐにすることには大きな意味があるのです。
実は、相続手続きには期限の定められているものがあります。期限のある代表的な相続手続きとしては「相続放棄」や「限定承認」があります。
限定承認という手続きは耳にしたことがないけれど、相続放棄という手続きは有名なので「知っている」「聞いたことがある」という方も多いのではないでしょうか。相続手続きには個別に期限が定められたものがあるという知識は葬儀と関連づけて知っておきたいことです。
相続放棄は特に借金の多い相続に有効な手続きとして知られています。相続におけるプラス(預金や不動産など)とマイナス(借金や未払いのお金など)を全て放棄するという裁判所でだけできる手続きです。
この相続放棄という手続きには「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」という期限が定められています。
「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは基本的に「家族の死」と解釈されます。個別事情によって期限の起算点が変わることがある他、期限の慎重手続きも存在します。しかし「借金があって困っている」という場合、のんびりと構えていることは危険であると言えます。
「葬儀後にすぐに遺産の話をするのはちょっと」と思うかもしれませんが、相続手続きには個別に期限が定められていることがあるため、早めに弁護士や司法書士に相談する方が安全です。期限についても弁護士や司法書士に詳しく確認しておく方が安心です。
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_13/
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_14/
葬儀後の手続きとしては助成金の手続きや加入団体の手続きがあります。こちらは基本的にあまり急ぐことはありませんが、中には手続きにタイムリミットがある手続きも存在するため注意が必要です。
助成金とは、葬儀を執り行った家族(場合によっては家族以外)に対して自治体が葬儀費用を援助するものです。
自治体によって申請書や助成金の額が少しずつ異なりますが、葬儀費用の領収書や通帳、印鑑、身分証明書などを自治体の担当窓口に持って行くことで手続きが可能な場合が多いです。期限が設けられていないことが多いですが自治体によって多少変わる手続きですので、心配な方は自治体のサイトを見るか窓口に確認するのがいいでしょう。
なお、自治体によっては死亡届を提出した直後にこの助成金の申請書をくれたり、案内をしたりといったことが行われているようです。
加入団体ごとの手続きとは、保険や年金、スマートフォンなどの手続きのことです。
賃貸住宅に住んでいた方は解約の手続きなども必要になるでしょう。特に現代社会では多くの方が契約しているスマートフォンやNHK、新聞などの「契約している限りお金を払い続けなければならない契約」については早めに事情を話して解約するのがいいでしょう。
保険金に関しては時効が関わってくる場合があります。早めに請求するか、請求が遅れそうならタイムリミットに関して保険会社に確認しておくと安心です。
http://www.city.saitama.jp/001/002/003/p001383.html
http://www.jili.or.jp/research/search/pdf/D_183_3.pdf
誰かが亡くなるということは、家族の人生を左右するような出来事です。
「自分の命は自分のもの」と思うかもしれませんが、一人の人間が亡くなることは多くの人間が手続きなどで動くことと同義ですから、一度でも葬儀や葬儀後の手続きを経験すると「人の生き死に」は驚くくらい多くの人が関わるものだとしみじみ思うはずです。
今回ご紹介した手続き以外でも、故人のサービス加入状況や生活状況により他にも手続きが必要になる場合があります。
葬儀後は一休みしたいくらい疲れるかもしれません。しかし、中には期限が定められている手続きもあります。葬儀後に手続きを終わらせてはじめて「本当の終わり」と「新たなはじまり」を迎えられると考え、スムーズに進めるための知識は蓄えておきましょう。